第101章

彼女は体勢を変えて津坂崇介にじり、と距離を詰める。紅い唇がふわりと開き、含みのある声で囁いた。

「津坂様。まだ分からないところがあるなら……ほら、私、ここにいるんですもの。聞けばいいじゃない……」

津坂崇介の眉間がわずかに動く。すると助手の武井景二郎が瞬時に「言いたいこと」を察し、すっと一歩踏み出して、二つのソファの間――ちょうどその隙間を塞いだ。

武井は頭を下げ、低く告げる。

「崇介様、幸音さんとミナミさんがいらっしゃいました」

――自分がいる限り、軽い女に崇介様へ近づかせるものか。

津坂崇介は流れに乗るように古川フニへ視線を移し、淡々と言った。

「古川さん。こちらも少し私用が...

ログインして続きを読む