第116章

それで、宮原ミナミが階段を上がる途中、うっかり彼の傷口に触れてしまっても、彼は歯を食いしばり、呻き声ひとつ漏らさず――全部、飲み込んだ。

意識を痛みから引き剥がし、必死に周囲へ向ける。どうすれば助かる。どうすれば――。

父さんは言っていた。午前六時にはM市に着く、と。そこまで耐えればいい。

その言葉を胸の中で何度も何度も繰り返し、ようやく歯の根の震えが収まった。

「ミナミお姉さん……あ、あれ? 上に……登ってるの?」

村木勘也が戸惑いがちに言う。

今は下へ行くのが正しいはずだ。

病院の下は広い。どこかの隅に隠れたほうが、上へ逃げるよりずっといい。

最悪、空いている病室に飛び込めばい...

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