第173章

前世を通しても、「泣きたいときに泣く」中年男に初めて遭遇した宮原ミナミは、さすがに面食らった。

「……どうしたの?」

津坂崇介は、彼女がこちらへ駆けてくるのを見て目を細めた。彼の視線を受けたミナミの瞳がきらりと光った気がして、胸の奥が、音もなく震える。そこからふっと、やわらかなものが湧き上がった。

――今日は仕事を切り上げて帰ってきて、正解だった。

次の瞬間、恨みがましい声が割り込む。

「崇介、やっと帰ってきたか! 俺はもう幸音と、あのよそ者に腹が立って腹が立って……!」

その声を聞いた途端、崇介は頭痛を覚えた。眉間を指で押さえ、ため息を吐く。

「……どうしてここにいる」

津...

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