第186章

津坂崇介は身を乗り出し、テーブルの赤ワインを手に取ると、ほんのひと口だけ含んだ。表情は微動だにしない。目の前で繰り広げられている熱い光景など、見えていないかのように。

キスが終わるや否や、若い女はハミルの首に両腕を回し、名残惜しそうに身を寄せた。

「ダーリン、すごい……さっき、息できなくなるかと思った」

ダーリン……?

武井景二郎は思わず眉を上げる。ハミルは七十を優に越えているはずだ。なのに、こんな若い妻を迎えたというのか。

とはいえ、人は誰しも老いる。最近になって急に現金をかき集めているのは、いったい何のためだ。

――全部、新しい奥方にでも渡すつもりか?

ハミルは若い女の柔ら...

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