第200章

「夜が明けたら転院でいい。わざわざ今やる必要はない」

津坂崇介は、できるだけ軽く言ってみせた。

あのとき医者にそう言われた瞬間、彼は自分でもよく分からないまま、黙って頷いてしまったのだ。

最初に説明しなかった。今になって目を覚ました相手に説明しようとしても、どう切り出せばいいのか分からない。

宮原ミナミは言いかけて、口をつぐむ。

万一、武井景二郎が来て医者の言葉を聞いたら――怒らせてしまうんじゃないか。そう思ったのだ。

けれど「武井景二郎」の名が頭をよぎった、その瞬間。

当の本人から電話がかかってきた。

宮原ミナミの言葉は、喉の奥に押し戻される。

「ちょっと電話、出てくる」...

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