第210章

三人はエレベーターでロビー階へ降り、玄関前でそれぞれ別れた。

武井景二郎はその場に立ったまま、二人が車に乗り込んで走り去るのを見送る。崇介様の足取りが、いつもより少しだけ軽い――そんな気さえした。

理解できない。今日は崇介様がハミルと契約を結ぶ大事な日だ。なのに、なぜ現場に顔を出さない?

崇介様は、以前はこんな人じゃなかった。

好きな相手ができると、仕事に全力じゃなくなるってことか。

……ふん。男ってやつは。

「武井アシスタント、崇介様は?」

ホテルの反対側から、仕立てのいいスーツに身を包んだ数人が歩いてくる。全員、会社のリスク管理チームだ。揃ってM国へ出張に来ているが、宿泊フ...

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