第214章

津坂幸音は潤んだ瞳を懸命に見開き、宮原ミナミを見上げた。ふにゃりと甘えるような声で言う。

「ミナミお姉さん、これは兄貴のせいじゃないの。私がヴァイオリン、習いたいって思ったの」

ネットで調べたのだ。ヴァイオリンは「楽器の女王」と呼ばれ、優雅で技巧を要する独奏楽器で、オーケストラの中でもいちばん難しいパートを担う――そう書いてあった。

それだけじゃない。演奏動画も見た。奏者は所作が綺麗で、立ち姿も堂々としていて、幸音は一瞬で心を奪われた。

新学期の行事で披露できたら――そう思って、彼女は自分から兄貴に「ヴァイオリンを習いたい」と言い出した。

兄貴は幸音に甘い。断るはずがない。

「ど...

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