第236章

安田雪香は目をきらきらさせ、いかにもゴシップ好きな光を宿して言い切った。

「リップ塗ってるじゃん。絶対、デートでしょ!」

宮原ミナミは肩をすくめ、横目で三組の「光る目」を見やると、順番にこつん、こつん、こつんと軽く叩いた。

「唇、いつも乾くの。冬なんて毎日リップ塗ってたし」

田舎育ちの彼女は、ハンドクリームだのリップクリームだの、ろくに使ったことがなかった。K市の風は骨を削るみたいで、油断すると鼻先が真っ赤になり、顔色まで青くなる。

もう初夏とはいえ、朝晩の風はまだ侮れない。

リップを塗るくらい、普通じゃない?

大げさなんだよ。

けれど安田雪香は、ははっと笑ってその薄い平静を...

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