第240章

「値引きされたら、いい値じゃ売れねぇかも……」と部下が小声でぼやいた。

連中は、坂村裕樹の独断専行にも腹を立てていた。あとで必ず、連絡も入れず勝手に潜り込んだ件を、徹底的に叱り飛ばしてやる――そんな空気だ。

だが、そもそもだ。

相手が坂村裕樹みたいな大の男をさらって、何の得がある?

いい歳した男だ。山奥に売って「息子にする」なんて話でもあるまい。

「S市の連中に連絡しろ」

「はい」

県をまたいだ合同捜査となれば、まずは書類を回して手続きを踏む。双方で情報を突き合わせてから動くとなると、最低でも十数時間はかかる。

その間に起きることは、全部――坂村裕樹ひとりでどうにかするしかな...

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