第35章

奥さまからの褒美よりも、専属運転手という高給の職を失わないほうが、よほど大事だ。

宮原ミナミは満足げに口元をゆるめ、心にもない賛辞を添える。

「羽岡、安心して。今日のことは全部、パパにそのまま伝えるから。パパも、あなたが娘を二人も助けたって知ったら、きっとご褒美をくれるわ」

羽岡平は頬を引きつらせ、悔しそうに言った。

「お嬢さま、もったいないお言葉です。俺の務めですから」

宮原ミナミは答えず、正面の三人の動きを鋭く追った。

羽岡平が傍観をやめたことで、向こうにも警戒が走る。

互いに距離を取り、左右に分かれて睨み合う。対立の形が、自然と出来上がった。

道路はしんと静まり返ってい...

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