第50章

ドアの向こうに立っていたのは、ほかでもない。津坂幸音の主治医――鈴宮栄介だった。

白衣をきちんと着こなし、柔らかな笑みを浮かべた眉目は穏やかで、誰もが思い描く「腕の立つ若い医師」そのもの。

栄介は手を伸ばし、幸音の髪をくしゃりと撫でる。

「今日は天気がいい。退院するには、ちょうどいい日だよ」

「えっ……!」

津坂幸音の顔がぱっと明るくなる。

「栄介お兄ちゃん、退院していいの? ほんとに、退院できるの?」

鈴宮家は代々医者の家系だ。津坂崇介が幸音を連れ戻したあと、ほかの病院を回ることもなく、真っすぐ鈴宮穂満病院へ駆け込んだ。

崇介と栄介は昔からの付き合いで、栄介はほかの予約まで...

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