第60章

監督官が試験用紙を抱えて教室に入ってきて、早崎朝子が口を開く寸前だった罵声は、そこでぴたりと止められた。

開始の合図が出るやいなや、朝子もいまは揉めている場合じゃないと悟ったのか、顔を伏せて解答に集中する。

二問ほど書き進めたところで、どうしても気になって斜め前の宮原ミナミを盗み見た。ミナミもペンを走らせていて、その手つきが妙に滑らかだ。

早崎朝子は鼻で笑う。

――白々しい。

一時間目は国語だ。問題が読めなくても、書いてあるのは漢字。設問を写すだけでも、用紙は埋まる。

午後の数学で、化けの皮が剥がれる。

ところが、朝子が一番期待していた数学の試験で、信じがたいことが起きた。宮原...

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