第69章

宮原家を出ると、ちょうどタクシーが一台、ゆっくりと寄ってきた。

走り出してすぐ、運転手が話しかけてくる。

「H山かい。今日は土曜だろ? 市街地は昼過ぎまで渋滞するかもしれねえ。別ルートで行くけど、いいか?」

M市の道を知り尽くしたような口ぶりだった。この時間帯の混み具合も、体に染みついているのだろう。

「お願いします」

宮原ミナミはイヤホンを取り出し、音楽を流した。

くねくねした山道を抜けると、運転手はハンドルを切り、人通りの少ない細い路地へ入っていく。

ミナミは窓の外に目をやった。景色が勢いよく後ろへ流れていく。頬杖をつき、視線をぼんやりと散らす。

前世、彼女はM市で十年暮ら...

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