第78章

手にしたバケツを見下ろし、宮原ミナミは眉間にしわを寄せた。柄が短すぎる。これじゃ全員に等しく――とはいかない。

そのときだった。遠くから、バケツとモップを抱えた一団が駆けてくる。

「宮原先生、こっち使って!」

宝崎方哉を先頭に、F組の連中がぞろぞろと現れた。どいつもこいつも、同じ“秘伝”の汚水バケツを提げている。人垣をぐいぐい押し分け、宮原ミナミの手元へ、使い勝手のいい“武器”を差し出した。

宮原ミナミは眉を上げ、視線をその中の一人へ流す。

――石原。逃げたんじゃなくて、援軍を呼びに走ってたわけね。

「ふふ……」

喉の奥で、低く笑う。誰にも見えないところで、目の縁がじわりと赤く滲...

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