第88章

二人の声は、野次馬のざわめきに呑まれていった。互い以外に聞き取れたのは――床に倒れて意識のない女だけかもしれない。

宮原ミナミは男を突き飛ばした。男はそのまま尻もちをつく。

人の弱みに付け込む卑怯者。

ミナミがいちばん嫌う類いだ。

反吐が出る。

「何するんだよ!」

男は顔を真っ赤にして立ち上がり、また足首に手を伸ばそうとする。宮原ミナミに向かって怒鳴り散らしながら。

「医者はお前だけじゃない! 俺も医学を学んでる! てんかん発作のときは本人に意識なんかないんだ。医者なら怪我させないようにしないとだろ!」

周りは医療のことなど分からない。男の言葉に頷きかける者も出る。床の女は...

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