第92章

少し前にも、母が遺したものを巡って二人はひと悶着起こしたばかりだ。そのとき宮原江太郎はずいぶん強気だった。そんな男が今さら電話をかけてくる――つまり、彼女に用がある。

しかも、おそらく母の遺産の話ではない。

母の遺品は、彼の手元にある。宮原ミナミは踏んでいた。あれは切り札だ。いちばん都合のいい場面で使う。たとえば彼女を脅して、財産の譲渡書類にサインさせる――そういう類の。

では今、彼が「彼女」を必要としているのは何のためだ?

宮原ミナミは、部屋の片隅に立てかけてあるカレンダーへ視線を落とした。6月23日。大学入学共通テストの成績開示。

さっきから鳴り続けた電話の数々が、一本の線で繋が...

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