第100章 機会がない

シアターの扉が不意に開かれる。その音と気配に、賀川時と雲田茜、そして控えていた警備員たちが一斉に反応した。

十数個の眼球が、瞬時にボブたちを射抜く。その視線に晒された瞬間、ボブたちは肌が粟立つような寒気を覚えた。警備員たちの瞳に宿る冷徹な光——それはカールが言っていた通り、戦場を潜り抜け、人を殺めたことのある者特有の殺気だった。

一人の警備員が目を細め、冷ややかな声で歩み寄る。

「急用がないなら入るなと言ったはずだが?」

ボブはごくりと生唾を飲み込み、泣き顔よりも酷い笑顔を顔面に張り付かせた。

「いやあ、これは映画館からのサービスでして。皆様への差し入れのスナックとドリンク...

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