第155章 いかにして悪女になるか

 林原海子はうつむき、手の中で無惨に潰れた葡萄を見つめていた。滴り落ちる深紅の果汁は、今の彼女の心そのものだった。まるで血が滴るように、赤い。

「ごめんなさい。力が余ってしまったわ。私のミスね」

 林原海子は淡々と言い捨てると、ハンカチを取り出し、指についた果汁を丁寧に拭い去った。

「少し疲れたから、水を飲んでくるわ。あなたたちは続けてちょうだい」

 そう言い残し、彼女は背を向けて立ち去ろうとする。

 その背中を、鈴木翔太が呼び止めた。

「おい、どこへ行くんだよ。飲み物ならここにあるだろ?」

 鈴木翔太は、佳紀が先ほど運んできたドリンク類を指差した。

 林原海子は冷ややかな視...

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