第51章 俺はあなたの孫ですか

賀衍時は胸元の口紅の跡を見下ろすと、顔色が一変した。他の女性と親密な接触をした覚えはないのに、なぜ口紅の跡がついているのか？

「あなたの体からは田中瑶子と同じ香水の匂いがするわ。それに胸元の口紅の跡も彼女がつけたものじゃないの？」雲田茜は怒りに震えながら賀衍時を問い詰めた。

賀衍時は雲田茜が田中瑶子の名前を口にしたとき、出発前に田中瑶子が彼の胸に飛び込んできたことを突然思い出した。

「俺は田中瑶子となにもしていない。この口紅の跡はたぶん偶然ついただけだ」賀衍時は必死に弁解した。田中瑶子が彼の胸に飛び込んできた事実は口にできなかった。そうすれば、賀川家の人間であることがバレてしまうからだ...