第52章 母のダイヤモンドリング

賀川お爺さんと松田執事が病院を出る前に、背後の病室から賀川哲也の悲鳴が聞こえてきた。

松田執事の顔の筋肉がピクリと動き、隣にいる賀川お爺さんに尋ねた。

「本当に止めなくてもよろしいのですか?」松田執事は恐る恐る聞いてみた。

賀川お爺さんの顔には相変わらず笑みが浮かんでいる。「なぜ止める必要がある?若者同士が少し騒ぐのは当たり前のことじゃないか。これが若者の付き合い方さ、わしにはわかるよ」

賀川お爺さんは笑いながら杖をつき病院を後にした。松田執事は口角をピクリと動かした。

「これはどう見ても恋の駆け引きには見えませんね。復讐されて悲鳴を上げているようにしか…」松田執事は愚痴をこぼしな...

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