第53章 あなたの夫が働いている場所

賀川時は背後で鈴木翔太が騒いでいることを気にも留めなかった。理論は強くても、実際の行動となると途端に馬鹿丸出しになる人間は多いものだ。

バーを出た賀川時は少し考えた末、雲田茜の家へ行くことにした。

賀川時は雲田茜の家の鍵を持っていた。前回彼女からもらったものだ。慣れた手つきでドアを開け、無意識に自分のスリッパを探したが、驚いたことに棚の中に放り込まれているのを見つけた。

「怒ってるのは分かるけど、スリッパに八つ当たりすることもないだろう」賀川時は少し呆れながらスリッパを取り出して履いた。

もう深夜だったが、雲田茜の部屋の明かりは消えていて、ただ寝室から青白い光が漏れていた。

「こん...

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