第56章 お前はバカか

雲田茜は、山本信がどこからそんな勇気を得たのか分からなかった。彼女と雲田美咲の間の問題に、よくも首を突っ込んでくるものだ。

山本信は雲田茜が全く怯えていない様子を見て、眉をわずかに寄せた。雲田茜の身分を知らなかったが、相手の態度からして、何かバックがあるのは明らかだった。

「念のために言っておくわ。私は雲田茜よ!かつては賀川哲也の婚約者だった」雲田茜は目の前の山本信を嘲るように見つめた。

山本信はずっと雲田茜という名前に聞き覚えがあると感じていた。記憶を辿り、急に表情が曇った。

雲田茜は山本信の表情を見て、相手が彼女の身分を理解したことを察した。

「確かに今は賀川哲也とは婚約を解消...

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