第75章 誘拐された

鈴木翔太は部屋から出てくると、額に浮かんだ汗をぬぐった。

「あの女、一体どんだけ飢えてんだよ。腰がへし折れそうだぜ」

鈴木翔太は荒い息を吐きながら愚痴をこぼした。

その時、向かいの部屋のドアが突然開き、中から賀川時が姿を現した。

鈴木翔太とは対照的に、賀川時の足取りはしっかりしており、額に汗一つかいていない。ただ、ワイシャツの上のボタンを二つほど外したその胸元には、無数のキスマークが散らばっていた。

賀川時は怪訝そうに鈴木翔太を見て尋ねた。

「どうして林原海子の部屋から出てきた? お前ら……」

賀川時が問い終わらないうちに、鈴木翔太は慌てて口を開いた。

「誤解する...

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