第88章 激怒の賀川時

賀川時は仕留めたばかりの小さな猪をぶら下げると、それ以上狩りを続けようとはしなかった。

「獲物はこれで食う分には十分だ。お前らがやりたきゃ、勝手にやればいい。俺は雲田茜を探しに行く」

そう言い捨てて、賀川時は狩猟区の出口へと足を向けた。

「待ってよ、賀川兄さん。猪一匹じゃつまらないでしょ? 鹿とかウサギも狩りましょうよ」

白鳥紗雪が賀川時の前に立ち塞がった。雲田茜の失踪が露見するのを防ぐため、少しでも時間を稼ごうという腹積もりだ。

「狩りがしたいなら自分たちでやれ。邪魔するな。こんな退屈な遊びに付き合う気はねえ」

賀川時は不快げに眉を寄せ、冷ややかな表情で白鳥紗雪を突き飛...

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