第89章 失踪した雲田茜

雲田茜は手にした衛星電話を凝視し、ついにその異常に気づいた。なんと、バッテリーが抜き取られているではないか。これでは何の役にも立たない、ただのガラクタだ。

雲田茜の胸の内に、不吉な予感が込み上げてくる。脳裏に浮かんだのは白鳥紗雪の顔だった。もしシェリーが白鳥紗雪の手先として送り込まれたのだとしたら、装備品に細工をしている可能性は極めて高い。

雲田茜は即座にバックパックを下ろし、手にしていた猟銃を確認した。予感は的中した。銃身こそまともだが、装填されている弾丸はすべて空砲だったのだ。こんな空砲で野獣に立ち向かえば、その結末はニュースの見出しを飾ることになるだろう。それも、遺体にモザイ...

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