第12章

浅尾武治は普段からとても大らかな若様気質で、誰かが彼の機嫌を損ねれば必ず冷ややかな皮肉を浴びせられる。

彼はまったく忍耐力がなく、細川明美に対峙するときだけは威厳を捨てて優しく話すことができる。

このような態度は細川明美にとって命取りの毒薬だった。

彼女は自分自身に彼との距離を保つべきだと言い聞かせ続けたが、それでも浅尾武治に簡単に心を揺さぶられてしまった。

彼女はどうすればいいのか分からなかった。

輝く目で見つめる彼を見て、細川明美はやはり心が柔らかくなった。

「もういいわ、もう過ぎたことよ。私があなたに本気で怒るわけないじゃない」

浅尾武治はまさにこの言葉を待っていたのだ。...