第20章

浅尾尚樹はビジネス界で様々な難局に立ち向かってきたが、今キャンパスに足を踏み入れたこともない女子学生の質問に答えられないでいた。

これだけ時間が経っているのに、彼女はまだ気にしているのか。

今後は厳しい言葉を控えた方が良さそうだ。次に会ったときにまた泣かれては困る。

浅尾尚樹は少し困ったように眉間をさすった。

「もう、泣くことないだろう。大した問題じゃないんだから」

細川明美はまだ小さな声で啜り泣いていた。

「あなたには小さなことでも、私は一晩中眠れなかったんですよ...」

浅尾尚樹の手の動きが一瞬止まり、彼の目に何かの感情が浮かんでは消えた。

「で、私たちの学校に何しに来た...

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