第24章

カウチにはまた二人だけが残され、浅尾尚樹はもう取り繕わなくなった。

だらしなく背後のソファに寄りかかり、両目には何の感情も宿っていない。

「お前さ、僕にだけ当たってない?僕と一緒にいるの嫌いなの?そうなのか?」

細川明美は誰の前でも素直で従順ないい子で、話し方さえ大きな声を出したことがなかった。

なのに彼に対してだけは、いつも尽きることのない不満をぶつけてくる。

まるで彼が彼女に多大な借りがあるかのように。

彼は以前、彼女に対して特に印象はなく、ただ自分の弟のお供だと記憶していた。

浅尾武治がいるところには、必ず彼女の姿があった。

彼女を初めて覚えたのは、浅尾家で泣きそうにな...

ログインして続きを読む