第25章

瞬く間に地獄から現実世界へ戻り、周りの喧騒な音楽もそれほど不快には感じなくなった。

細川明美はむしろ奇妙な感覚が湧き上がってきた。これこそが人間らしい生活なのだと。

毎日自分を仮面の中に閉じ込めるのは、本当に辛すぎた。

鼓動に合わせて鼓膜が響いているが、彼女の心臓はドキドキと高鳴っていた。

かつてない興奮が彼女の全身を駆け巡った。

携帯電話がまた鳴り出した。やはり浅尾武治からだった。

細川明美はさっさと携帯の電源を切った。見ざる聞かざるが一番だ。

携帯をバッグに入れて顔を上げると、浅尾尚樹の黒い瞳が彼女をじっと見つめていた。

細川明美は先ほどの自分の大言壮語を彼がすべて聞いて...

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