第27章

真紅の痕跡が彼女の雪白の肌に残り、不思議と調和していた。

まるで名匠の収蔵する絵巻物のように美しい。

浅尾尚樹は自分がそんな考えを持つべきではないと分かっていたが、今は自分の脳をコントロールできなかった。

ある声が繰り返し響く。

「彼女の全身をこんな痕跡で埋め尽くしたい」

この考えは自分でも荒唐無稽だと思った。やはり酔いすぎて頭が回らないのだろう。

しかし細川明美はまだ危険が迫っていることに気づかず、相変わらず落ち着きなく手首を動かしている。

「聞いてるの?早く離して、あなたに構われたくないわ!」

浅尾尚樹は眉をひそめ、唐突に言った。

「じゃあ誰に構ってほしいんだ?浅尾武治...

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