第36章

「明美ちゃん」

浅尾武治はやや躊躇したが、それでも自分の思いを口にした。

「俺たちが変わらないままでいられたらいいなって思うんだ。大人になって初めて気づいたよ、大人の世界がどれだけ残酷かって。俺たちみたいに幼なじみで育った仲間って、本当に貴重なものなんだ。これは後から現れた誰かが頑張っても敵わないものだよ」

「この関係がずっと変わらないでほしい。お前は純粋すぎるから、俺が守ってやらなきゃならないんだ」

細川明美は爪が手のひらに食い込むほど強く握りしめていた。もう我慢の限界だった。

彼女は誰かの保護など一度も必要としたことがなかった。確かにこの世界は残酷だ。だからこそ彼女はあらゆる困...

ログインして続きを読む