第46章

その願いを込めて、彼女はまるでこっそりお菓子を食べた子供のように素早く目を開け、ろうそくを吹き消した。

ろうそくが消えないうちに、自分の願いが神様に聞き届けられないことを恐れるかのように。

「明美さん、そんなに嬉しそうな顔して、どんな願い事をしたんですか?」

中村信也は少し好奇心をそそられた様子だった。

細川明美は慌てて口を手で覆った。

「ダメダメ!願い事は口に出したら叶わなくなっちゃうんだから!」

この少し幼稚な言葉が彼女の口から出るとなぜか可愛らしく聞こえた。

ろうそくを吹き消したら次はケーキを切る番だ。中村信也はナイフを彼女の手に渡した。

細川明美は笑顔で切ろうとした瞬...

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