第47章

浅尾尚樹の瞳孔が一瞬震えた。前回、細川明美がこんな言葉を口にしたのは、酔っていたからだ。でも今は——。

彼女は今、完全に正気のはずだ。

浅尾尚樹は自分の声が震えているのをはっきりと感じていた。

「酔ってるのか?」

細川明美はそう言ったきり黙り込んでしまった。自分がどうしてこんなに大胆になれたのか、彼女自身にもわからなかった。

浅尾尚樹にこんな風に話しかけるほど大胆になれるなんて。

ただ、浅尾尚樹があんなにも自暴自棄になっているのを聞いたとき、彼女は本当に腹が立ったのだ。

彼はどうして世界に自分を気にかける人間がいないと思い込んでいるのか?

もし細川明美が彼のことを気にかけてい...

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