第48章

浅尾尚樹は頷いて、暗黙の了承を示した。

細川明美は黙り込み、空気が少し妙な雰囲気に包まれ始めた。

翻訳の仕事は無理難題というわけではない。結局のところ、細川明美はその専門分野で学んでいるのだから。

だが、浅尾尚樹の会社で働くということは、浅尾家の事業の下で働くということになる。

浅尾武治は浅尾家の若様として、必ずそのことを知るだろう。

今でさえ二人の関係は微妙なのに、彼女が浅尾尚樹と親しくなったと知ったら——

細川明美はその光景を想像することすらできなかった。

彼女はすぐには返事をしなかった。

浅尾尚樹は一目で彼女の心配を見抜いた。手に持ったタバコはもう吸い終わりそうだった。...

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