第51章

浅尾尚樹は振り返ろうと努力した。いつの間にか隣家の少女が後ろに立っていた。彼女は中学部にいるはずじゃなかったか?

だが今の彼は他人のことを気にかける余裕などなかった。だって高熱で目が回るほど具合が悪いのだから。

次の瞬間、彼は意識を保てず倒れそうになっていた。

人は弱っている時、自分を気遣ってくれる相手に依存しやすくなるものだ。今の浅尾尚樹はいつものような尖った態度ではなかった。細川明美は彼が黙っているのを見て、手を伸ばし額に触れた。熱い。

少女の冷たい手が触れた時、浅尾尚樹は何か特別な心地よさを感じた。

彼はほんの少し、彼女の手がもう少し長く自分の顔に触れていてほしいという衝動す...

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