第52章

細川明美もこんな風に低姿勢で話したくはなかった。ただ、若い彼女の頭の中にはふと良くない考えが浮かんでしまったのだ。

小学生の頃、クラスにも高熱が出ても病院に行くのを頑なに拒んだ男の子がいた。

結局、その子は気を失ってしまい、目を覚ました後は人が変わったように、言葉もろくに話せなくなったと聞いた。

両親は泣き腫れた目で嘆き悲しんでいた。

彼女は浅尾尚樹が既に可哀想な境遇なのに、もし彼までバカになってしまったら、浅尾家は絶対に彼を見捨ててしまうだろうと思った。

お母さんも彼に優しくないのに、そうなったら彼はどうするのだろう。

浅尾尚樹は少し黙り込んだ。なぜ自分が薬を飲まないことに、細...

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