第55章

人は一度疑いを抱くと、それまでのすべての良いことを否定してしまうものだ。

細川明美は思わず考えてしまった。もし今回、林田美咲に頼んで選んでもらった贈り物だとしたら。

彼が付き合う前に買ってくれたあの贈り物たちも、適当に選んだだけなのではないか。

ただ値段が高ければいいと思って、細川明美が本当に喜ぶかどうか、彼女に似合うかどうかなど、浅尾武治は考えもしなかったのではないか。

彼にとって贈り物をすることは、面倒で、いい加減にこなせる任務に過ぎなかったのではないか。

それなら、これまでの二人の関係は何だったのだろう。彼女が贈り物を受け取るたびに喜んでいたことは何だったのだろう。

林田美...

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