第59章

細川正人は足を止めたものの、浅尾武治に一瞥もくれなかった。

やはり、あれほど泣き崩れた細川明美を見れば、父親として一番心を痛めるのは当然だった。

「おじさん、この件は僕が悪かったんです。僕のことで明美ちゃんに嘘をつかせるべきじゃなかった。おじさんとおばさんに心からお詫びします。申し訳ありませんでした」

彼は真摯な態度で深々と頭を下げた。

細川正人もこれ以上不機嫌な顔をしているわけにはいかなかった。子供たちとこれほど細かいことで争って何になるのか。

彼は溜息をつき、それ以上何も言わなかった。

細川明美は早く帰りたかった。そもそも最初からこの食事会に来たくなかったのだ。

ましてや今...

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