第9章

玲奈視点

『全部隊、配置を確認。ターゲットエリアの安全確保は完了』

イヤホンから、作戦指令がノイズ混じりに聞こえる。

私は防弾ベストのストラップを締め直し、肩に馴染んだその重みを感じた。冷たい雨粒が顔を打つが、ほとんど気にならない。五年――五年間もの追跡の末、今日、すべてがようやく終わるのだ。

「準備はいいか?」隣で浜田刑事が静かに訊ねた。彼は今の私のパートナーであり、師でもある。

「とっくに」と私は短く答え、銃を最後にもう一度点検し、薬室に一発、弾が送り込まれているのを確認した。

高峰玲奈、二十二歳。新川警視庁の重大犯罪課に所属し、ヤクザと銃器事件を専門とする刑事...

ログインして続きを読む