第1章

今夜のK市は、ちょうど台風が通過中で、外は激しい風雨に包まれていた。しかし、その雨幕の中を一台の自転車が疾走し、急ブレーキをかけて病院の入り口で停止した。

「誰か!救急です、急いで!」

冷たい女性の声が響き、数人の看護師の注意を引いた。彼女たちは来訪者を見て驚いた。制服を着た女子高生が、背中に男性を背負っていたが、その男性は全身血まみれで、来た道すがらにも血の跡が残っていた。

「どうしたんですか?この方はどなたですか?」

警戒心を抱いた看護師が尋ねると、桜井有菜は黙ったまま、男性を運ばれてきたストレッチャーに寝かせ、そして彼女に携帯電話を投げた。

「彼の携帯です。あなたが連絡係。私...

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