第110章

退院の手続きを済ませるや否や、藤宮弘也は我が物顔でマンションに転がり込んできた。本来なら桜井有菜は引っ越す予定だったのだが、この「負傷者」の看病という名目で、その計画は一時棚上げとなった。

車がマンションの下に到着すると、藤宮弘也はまるで介護が必要な重病人のような振る舞いを見せる。桜井有菜は車を降りて彼に駆け寄り、その腕を自分の肩に回させ、腰を支えて歩き出した。

その光景を目にした渡辺誠治は、心底呆れ果てたような顔をした。

「おいおい、藤宮のやつは何を遊んでるんだ? 昔はナイフで滅多刺しにされても平然と喧嘩してたくせに、骨が数本折れたくらいで廃人扱いかよ」

秋田風は口を挟む勇気もなく...

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