第114章

桜井有菜は食事の手を進めながらも、どこか沈んだ様子だった。そんな彼女の頭を、藤宮弘也が優しく撫でる。

「あとで美也ちゃんが来るんだろ? 遊びに行く約束をしてたんじゃないのか」

桜井有菜は頭をさすりながら、はっとした。越前美也のことをすっかり忘れていたようだ。

「忙しくて忘れかけてた! うん、すぐ着替えてくる。久しぶりだから楽しみ!」

少女の機嫌が直り、藤宮弘也はそこでようやく安堵の息をついた。

午後になり越前美也がやってくると、玄関に入るなり桜井有菜に抱きついた。

「有菜ちゃん、有菜ちゃん! 会いたかったよー!」

「私も会いたかった!」

そう言おうとした途端、越前美也が鼻を鳴...

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