第139章

桜井有菜は可笑しそうに彼女を見つめると、手を伸ばして越前美也の頬をむにゅりと摘まんだ。

「そんなの、もう過去のことですよ。五年も前のことです、美也ちゃん。とっくに忘れました」

 忘れるわけがない。だが、人はいつまでも後ろを向いてはいられないのだ。前を向いて歩くべきだ。だから桜井有菜は手放すことを選んだ。世界はこんなにも美しいのに、なぜ過去の足枷に歩みを止められなければならないのか。

 昼休み。ルカスがまた桜井有菜の向かいに座った。有菜は無表情で彼を見やり、越前美也はあからさまに不審な顔をする。

「ねえ、あんた頭おかしいんじゃないの? うちの有菜ちゃんがあんたのこと嫌ってるって知ってる...

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