第179章

桜井有菜はホテルの部屋に戻るなり、ソファにどさりと倒れ込んだ。

その姿を見て、藤宮弘也は呆れつつも胸を痛めた。

「家に帰って寝ないか? みんなご馳走を作って、お前の帰りを待ってるんだぞ」

有菜は少し考えた。家を空けてもう二日になる。そろそろ帰るべきだろう。

「それじゃあ帰ろう。この部屋もチェックアウトしないと。お店の商売の邪魔になっちゃうし」

弘也は唇の端を上げて笑い、手を伸ばして有菜の頭をポンポンと撫でた。

「最上階は一般開放されていないんだ。北村家が身内をもてなすために特別に確保している部屋でね。もっとも、お前のあの友達は身内じゃないから、きっちり部屋代を取ってもいいけどな」...

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