第209章

数十年も音信不通だったうえに、所詮は千早家の分家にすぎない者が、千早家の資産を乗っ取ろうなどと、厚顔無恥にもほどがある。秋田風もこの事態をひどく荒唐無稽なものだと感じていた。

そして今、その千早家の末裔を名乗る男は、すでに隠れ家的な料亭にまで押し掛けていた。

厨房で立ち働いていた成田は、表に客が来たと聞いて顔を出した。客席には、仕立ての良いスーツに身を包み、黒いサングラスをかけた中年男がふんぞり返っている。背後に二人の屈強なボディガードを従えたその姿を見た瞬間、成田は目の前の男が何者であるか直感した。

「私に何かご用でしょうか」

男は傲慢な態度で成田を一瞥し、鼻で笑った。

「用もな...

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