第5章

祖父の杖が床に鳴り響き、桜井美月は心の中でまだ納得がいかなかった。

「おじいちゃん、あなたは偏り過ぎよ!有菜はあんな恥知らずなことをしたのに、どうして桜井家に残れるの?」

「有菜は私の孫だからだ」

おじいさんのこの威厳ある態度に、桜井有菜は目に熱いものを感じた。

この世で唯一彼女に優しく、無条件で信頼してくれる人は、おじいさんだけだった。

「有菜ちゃん、五年も会わなかったな。おじいちゃんは寂しかったぞ!相変わらず心配かけるねぇ」

桜井有菜は鼻をすすり、おじいちゃんの丸まった背と白髪をした頭を見た。五年の間に、おじいちゃんはずいぶん老けていた。

彼女はおじいさんの手首を握りしめた...

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