第55章

桜井有菜は少し驚いた様子で藤宮弘也を見つめた。彼の真剣な表情を見て、手に持っていたスプーンを置いた。

「何かあったの?」

藤宮弘也は桜井有菜をじっと見つめながら、ゆっくりと言った。

「以前K市で俺を狙った連中が、最近また動きを見せている。それに、今のお前の立場は多くの人間にとって魅力的な的になっている。金曜日の株主総会にも、お前を出席させたくない連中がいるはずだ。有菜、これは万が一のためだ」

藤宮弘也の言葉を聞いて、桜井有菜は俯いた。彼女は藤宮弘也が自分を心配してくれていることはわかっていた。でも、あの人は本当に金曜日の株主総会だけのために彼女に手を出すだろうか。

「ありがとう」そ...

ログインして続きを読む