第57章

この父親に対して、桜井有菜も義理を果たしたと言えるだろう。

彼女が再び座ってからそう時間が経たないうちに、警察が来てその佐々木常務を連行していった。

桜井グループの社員全員が外に出て見物する中、桜井有菜は会議室の窓の前に立ち、佐々木常務がパトカーに乗せられるのを見届けてから、他の取締役たちの方を振り向いた。彼らは急いで席に着き、息をひそめていた。

弱みを一人の少女に握られ、彼らは不満を抱きながらも、桜井有菜を怒らせる勇気はなかった。

「わかっていますよ。今、皆さんは私のことを憎んでいるでしょう。場合によっては私を消してしまえば、この証拠もこの世から完全に消えるのではないかとさえ考えて...

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