第58章

桜井有菜は動かずに立ったまま、店内の他の店員を見上げ、一人を指さして呼んだ。

「あなたに接客してもらいたいわ!」

桜井有菜が指名したのは少し年配の女性店員で、おそらく入店して間もないらしく、制服には臨時の名札が付けられていた。

女性店員は少し驚いた様子で、自分を指さした。

「私のことですか?」

桜井有菜はうなずき、彼女に来るよう合図した。女性店員が近づくと、こっそり同僚に視線を送ったが、その同僚からは鋭い目で睨みつけられた。

「何しに行くの?あの子がこれを買えると思ってるの?これ全部千万円以上の宝石なのよ。あなたが触れていいものじゃないわ」

桜井有菜は冷笑し、すぐにスマホを取り...

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