第79章

藤宮弘也は意外そうに桜井有菜を見つめた。まさか彼女が、自ら薬を塗ってくれようとは思いもしなかったからだ。

 実のところ、藤宮弘也の肩はとうに腫れ上がり、腕を上げるのも億劫なほどだった。しかし、彼は元来我慢強い性分であり、これまで一言も弱音を吐かずに耐えていたのだ。

 だが、桜井有菜に指摘されると、不思議と傷口がさらに疼くような気がした。

「ただのかすり傷だ。薬なんて必要ない」

 桜井有菜は鼻を鳴らすと、腕組みをして藤宮弘也の正面に立ち、冷ややかな視線で彼を見下ろした。

「……本当に、必要ないんですか?」

 藤宮弘也は苦笑しながら桜井有菜を見返した。気迫だけは十分だが、いかんせんそ...

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